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唇に媚薬
第15章 Yours forever
……心臓がドキドキして
足がふわふわして、浮いているような感じで
エレベーターのボタンを押す指も震えてしまう。
「いつものBARに、8時って言ったじゃない……」
どうしよう。
だめだ、胸がパンクしそう。
うちの会社もアパレル業界では大手に入るけど
葵の本社の巨大なエントランスに比べたら、その広さは半分以下だ。
エレベーターを降りて、入口の自動ドアを抜けて外に出て
ゆっくりと周りを見渡すと
メイン通りに繋がるコンクリートタイルの上に……
「………っ」
私と同じ方向に歩いて帰る、女性社員達が
彼の横を通り過ぎると、決まって後ろを振り返っていく。
街灯の下、淡いオレンジ色の光に
照らされたこげ茶色の髪と、小さく整った顔。
軽めのステンカラーコートのポケットに左手を入れて
反対の手に持つ携帯へ、その視線は向けられている。
“ やべぇな、あれは ”
……姫宮さん
自分で言うのもなんですが
あのカッコ良さはヤバイを通り越して、危険です。