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唇に媚薬
第15章 Yours forever

目の前に立った葵が、覆いかぶさるように見下ろしてくる。
丸い支柱に追い詰められて、私は息をのんだ。

な、なにか話さなきゃ……っ


「あ、葵、向こうでエステにでも行ったの…!?」

「……は?」


バクバク波打つ胸を左手で押さえて、なんとか口を動かす。


「だって、なんか磨かれたみたいにピカピカしてる!」

「………」

「へ、変な光放ってるし、美しいし……
あ、ってゆーか、このカーキのロング素敵……」


スーツの上に羽織った、初めて見るそのコートに気付いて
思わずそっと襟元に触れると……


「……ははっ」


斜め上から、笑い声が響いた。


「なにがエステだ。 そんなとこ行くかよ」

「………っ」

「アホだな、お前は」


目尻を下げたその表情を見て
きゅうっと心臓が締めつけられる。

コートの襟を掴んだまま、その深い瞳から目が離せない。


「俺は、2週間ぶっ続けで仕事してたっつーの」


固まる私の頭に、葵はふわっと手を乗せた。


「今までで1番集中した。
……蘭に、早く逢いたくて」

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