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唇に媚薬
第15章 Yours forever

「………っ」


ズキューンと、胸の奥からすごい音がした。

ぐりぐりと私の髪を撫でる葵の手が、愛しくて
ここが会社じゃなかったら、今すぐこの胸に飛び込んでしまいたい。


「……私も、逢いたかったわ」


2週間前、電話で話した時の熱い想いが蘇ってくる。

“ あなたしか見えない ” って
英語でそう言ってくれた葵。


……ねぇ、葵。
私あの時嬉しくて号泣したんだよ?

今日は誕生日でも、記念日でもないけど
この日をどれだけ待ち焦がれていたか……


「……行こうぜ、腹減った」


甘い会話を続ける気は無いらしい。
頭から離した手を、葵は私の肩に回した。


「奢ってくれんだっけ」

「あ、ねぇ待って」


駅に向かって歩き始めた葵を止める。


「やっぱりいつものBARじゃなくて。
葵の会社の近くの、ワインバーに行きたい」

「は? 戻んの?」

「だ、だってこの前行けなかったし……」


……というより

浮ついた私の心と体
この火照った熱を、歩いて冷ましたいのだ。

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