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唇に媚薬
第15章 Yours forever
……jazzの生演奏は、続いているはずだし
心地良い夜風も、止まったわけじゃないと思うんだけど
「………」
私の耳には、葵が放った4文字だけが繰り返している。
け
っ
こ
ん
?
「……おい」
「………」
「蘭」
体を離されて、両方の肩だけ掴まれた格好で
葵が私の顔を覗き込む。
「なんか言えよ」
「………」
「聞こえただろ?」
「………」
「……なぁ、意識戻してくれねぇ?」
眉を寄せて、葵は私の顔の前でひらひらと右手を振る。
はい、見えてます
聞こえましたし
意識もあると思います
大丈夫です
……いやいや、大丈夫では無いよ。
だ、だって……
「……結婚?」
「あぁ」
「今?」
「え?
……いや、別に今じゃなくてもいいんだけど」
「……へ?」
「お前、一生独身でいたい?」
「……それ、は、無いけど…」
「それなら」
私と目線の高さを合わせて、葵は微笑んだ。
「蘭の生涯の相手は、俺にして」