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唇に媚薬
第15章 Yours forever
……演奏が終わったようで、拍手の音が聞こえてきた。
「………」
風が舞って、体を吹き抜けていくから
今、この時間が現実だってことが分かる。
「……嫌いになんて、なるわけねぇだろ」
少しの沈黙の後、葵が静かに口を開いた。
「俺の片想い、どれだけ長いと思ってんの」
「………っ」
「嫌いになる理由がねぇよ」
……トクンと心臓が跳ねて、ゆっくり目をあけると
葵は片手だけ離して、私の頬に触れた。
「ずっとお前を見てたから
お前の外側も、内側も全部知ってるつもりだったけど」
「………!」
「付き合ってから……色んな新しい発見があって
飽きねぇし、俺は楽しいよ」
……いつになく、葵の声が優しくて
胸がいっぱいで張り裂けそうになる。
葵の指が私の頬をそっと撫でたから
……その感触で、私の瞳から涙が零れていることに気付いた。