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唇に媚薬
第16章 唇に媚薬
「なんだよ、その不服そうな顔」
下着ごと脱がせた私のストッキングを、葵が放り投げて
寝室の床に転がっているスーツケースの上に命中した。
自分のシャツのボタンを外しながら、葵が私を見下ろす。
「機嫌悪いな」
「……悪くありません」
「思いっきり睨んでんじゃねぇか」
「睨んでない!」
「はは、怖ぇ~
噛み殺されそう」
~~なにその発言!
こんな押し倒された状態で噛めるかっつーの!
「蘭、言いたいことあるなら言えよ」
照明を落とした室内は、夜景の光だけで薄暗くて
……それでも
笑いながら上半身裸になった葵の、割れた腹筋が浮かび上がる。
「………」
私も早く葵に抱かれたかったから、異論は無いんだけど……
「……さっきと別人ね」
「あ?」
「失礼、言い直すわ。
“ さっきの葵 ” が、葵じゃないみたいだった」