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唇に媚薬
第16章 唇に媚薬

……思い出すだけで、ほうっと感嘆の溜息が漏れてしまう。


サプライズな会社のお出迎えに

優しい旋律が奏でる中、ふいうち胸キュンプロポーズ

脳が溶けてしまいそうな、甘い台詞のオンパレード

体が熱く燃えるようなキス


「……そして、この光り輝くエンゲージリング……」


左腕を天井に伸ばして、うっとりと薬指を眺める。

なんてね、冗談冗談。
入れ替わった私の心は、大切なことが何かちゃんと分かってる。

例えこれが、屋台で売ってるようなプラスチック製の指輪だとしても
私は、彼を……


「腕、邪魔」

「………!」

「背中浮かせろ」


冷めた声で、葵がブラのホックを器用に外した。
……気付いたら私、何も身につけていない。


「………」


だから

もう一度言いますが

1時間前に愛の告白をした人と、あなた本当に同一人物なんですか?


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