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唇に媚薬
第16章 唇に媚薬

「ひとつ、聞きてぇんだけど」


一口飲んだ水のペットボトルを、私に渡して
ベッドの淵に腰を下ろした葵。

上半身裸の彼の背中を、うっとりと見つめながら
やっと自由が戻った体を起こす。


「なぁに?」

「……お前の会社に
“ ヒメ ” って呼ばれてる奴いねぇ?」

「……えっ?」

「暗くて顔が見えなかったけど
あのツーブロックの茶髪は……」


1人でブツブツ呟く葵を見て、首を傾げる。
なんでいきなりそんな質問を……


「……あ」


ツーブロックの茶髪は、もはや代名詞。
思い当たるのは1人しかいない。

そして、続けて思い出した。


「それ、学生時代からの姫宮さんの愛称だよ。
リーダーに聞いたことがある」

「………!」

「私の隣りの席にいるよ」

「………!!」


そっか、今更だけど
葵には、MDが変わった~くらいにしか言ってなかったかも。

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