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唇に媚薬
第4章 添い寝と腕枕

「大丈夫?」

「……悪い」

「えっ?」

「えってお前……」


……なんで俺と手を繋いでたんだよ
って普通に聞けばいいのに、声にならない。

俺が無理矢理掴んでたのか?
だめだ、記憶飛んでる……


「よいしょっ、意外と重いのね」

「………」

「で、ここからどっちの方向?」

「……何が?」

「何って……葵のマンション」


俺が落とした鞄を拾って、スーツケースの上に乗せると
駅のコンコースから蘭は歩き出した。

い、いやいや
マジで何してんの……


「……蘭、そっちじゃねぇよ。 この上」

「え!? このデカイ奴!? 駅直結じゃん!」

「………」

「ひゃ~何階建てよ? 最上階が見えない!」


目を見開いて顔を上げる蘭。
いつもの通勤服じゃなくて、淡いベージュのコートに白いマフラーを巻いている。

……駅のデジタル時計が、土曜日の夕方4時であることを示していて
間違いなく、空港から帰ってきたここは……


「……お前、俺の家に来るわけ……?」

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