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唇に媚薬
第5章 攻防ゲーム

私の声が勝ったようで、葵の手が止まる。
……バスの中、葵のポケットで
マナーモードの会社携帯がひっきりなしに振動してた。
ワケの分からない暗号と外国語で埋め尽くされた書類が、鞄の中に溢れてた。
この人、一体どれだけの時間を仕事に費やしてるの?
「……うっ……っ」
「………!!」
目頭が熱くなった私を見て、ギョッとした顔に変わった葵。
……睡眠薬、1種類じゃなかった。
すごい量だった。
お酒と煙草は、相変わらずだけど
思い返してみれば、飲んでる時葵はほとんど食べない。
……よく見たら、目が充血してる。
顔色も悪い。
このままじゃ……
「あ、葵が……倒れちゃったらどうしよう」
「は?」
捲られたワイシャツの袖をガシッと掴む。
「食べれなくなっちゃって……っ
こ、このまま眠れなくて……」
「……いや、食ってるし。
不眠症ってだけで、病んでるわけじゃ……」
「病気になってからじゃ遅いのよバカ!」
「………!」
「う…っ、なんでもっと自分を大事にしないの……」
「~~~っ」
「葵が、い、なくなっちゃったら、私……っ」
「~~あーもう分かった分かった!」

