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唇に媚薬
第1章 理想と現実

「意味不明」

「…………」

「というより、何様だてめぇは」


ウイスキーの氷をカラカラ鳴らして、葵が溜息を漏らす。
右隣りに座る彼の横顔は、惚れ惚れするほど美しい。

葵が他人だとして
この低い声で、甘い言葉を囁いてくれたらどんなに痺れることだろう。

……って、葵の彼女は聞いてるし、知っているのかな。
幼なじみの私が知らない、恋人としての葵を……


「どんな関係だったら惚れてたわけ?」


大して興味も無さげに、葵が聞いてきた。
その証拠に、財布を取り出して帰ろうとしてる。


「他人」

「……関係も何もねぇだろ」

「他人から始まるのよ。
突然の出逢いで、でもそれは運命なの」

「はぁ?」

「例えば。
葵はお忍びで来日した異国のプリンスで、私に一目惚れをするとか……」

「~~~ゲホッ…!」


私が真面目に理想を話してる途中で
葵が派手に噎せた。

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