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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
背中合わせで座ってたことに、全然気付いてなかった。
突然起立したけど、なにしてんだこいつ。
「あれ、佐伯ちゃんもう食べないの?」
「てゆーか、なんか顔色悪くない? 」
一緒に食っていた佐伯の仲間が、少し驚くように彼女を見上げた。
その言葉を聞いて、俺も振り返ったまま下から覗き込む。
「ち、ちょっと食欲無くなっちゃって…」
「え!? 具合悪いの?」
「ううん、大丈夫。
ごめんね2人とも、先に戻……」
「佐伯」
俺が呼びかけると、佐伯はビクッと体を震わせた。
何故かこっちを見ない。
「体調悪いのか?」
「……っ い、いえ、悪くない、です」
「無理すんな。
俺今日午後は社内にいるし、なんなら手伝う……」
「平気です!」
佐伯に珍しいデカイ声で返されて
俺が口を閉じると、佐伯はハッとして頭を下げてきた。
「せ、瀬名さん、ごめんなさい……っ」
「いや、別に謝らなくてもいいんだけど……
とにかく1人で抱え込むなよ?」
「……は、い……」
その声が擦れている。
平気じゃねぇだろって言おうとしたけど、佐伯は逃げるように去っていった。