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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
「……はぁ。
なんで気付かなかったんだ、俺」
佐伯が見えなくなったので、体を元に戻すと
目の前で項垂れた蓮が、自分を責めるように溜息を漏らした。
……つーか、何の話だ?
「気付かなかったって、何が?」
「何もかも。
なんだか最近感覚が鈍ってるんだよな」
「はぁ? なんだそれ」
「いい。
鈍感王子に言ったところでもう遅い」
「………」
……おい、いつまでその王子ネタを引っ張るんだ。
この俺が鈍感?
笑わせんな。
こいつの表情が変わったのは、明らかに佐伯の後ろ姿を見てからだけど
別に何かあるわけじゃねぇし……
……あ、そういや
「解除してやるの、忘れてた」
大事なことを思い出してそう呟くと、蓮が顔を上げた。
「解除?」
「あぁ、佐伯をバーチャル彼女に設定したままでさ」
「………!」
「本人に謝らねぇとな。
勝手に長らくご迷惑おかけしましたと」
「……本、人……?」
顔色を変えた蓮に、何故かしつこく尋問されて
カナダに行く前、休憩所での一幕を掻い摘んで説明すると
「……瀬名、箸を置け」
突如、背後に悍ましい鬼火を浮かべた蓮に
一段と低い声で命令された。