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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
* * *
手を繋いだ瞬間を見て、周りの女達がザワつく中
蓮に逃げられた俺は仕方なく喫煙所へ向かった。
モヤつく気持ちがなかなか鎮まらない。
つーか、モヤモヤってなんだ?
俺、モヤモヤしたことなんてねぇんだけど。
「瀬名さん、モヤモヤって何ですか?」
いや、俺が聞きたいんだけどと言おうとして
首を傾げる後輩によって、心の声が出ていたことに気付いた。
……危険。
自分を覆ってるもんが剥がれ落ちている気がする。
だめだ。
いい加減にしろよ俺。
煙草を灰皿に潰して、重い足取りでフロアに戻ると
午後1時になって鳴り始めた電話に、佐伯が英語で応対していた。
「so、sorry…onemoreplease……」
「………」
リスニングが苦手な佐伯。
だけど、筆記は完璧だし営業事務として何も言うことねぇ。
一生懸命受話器を耳に押し付けてる姿を横目で見ながら、隣りの自分のデスクに座った。
……なに、この緊張感。