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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
「はー、何とか聞き取れた……」
「良かったな」
「………!!」
ホッとした様子で、電話を切った独り言に答えると
ビクッと体を震わせて、佐伯が俺の方に振り向く。
「せ、瀬名さん……」
「今のどこから?」
「NY支社の◯◯からです。
実はずっと決まらなかったことがあって……」
「いいよ途中の話は。結果だけ教えろ」
「すみません。
為替による原価高騰の件、最終的に……」
「データ。 すぐ出して」
「は、はい」
パソコンからリストを引っ張り出して、説明を続ける佐伯。
「………」
……やっぱり、ありえねぇだろ。
佐伯に聞こえないように、俺は溜息を漏らした。
今の遣り取りを客観的に見てどうよ?
惚れる要素なんてあったもんじゃねぇ。
言葉はキツイし態度は冷てぇし
自分でもそう自覚があるわけだから、言われてる方は相当堪えるわな。
毎日こんなのと顔を合わせてりゃ、自然と優しい男に目がいくだろ。
「……瀬名さん?」
ハッと我にかえると、佐伯が俺を見つめていた。
小動物のような円らな瞳が揺れている。