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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
って、俺なりに精一杯優しく声を掛けたつもりなのに
佐伯は下を向いてしまい、何も言わず黙ってしまった。
「おい、聞いてんのか?」
「………」
「……別に無いなら無いでいいんだけど」
なんなんだよ。
ハッキリ言えばいいだろ。
だんだんとイライラしてきて、俯いたままの佐伯から視線を逸らす。
「………」
……いや待て、これがよくねぇのか。
待つべき? 聞くべき?
蓮だったらこの沈黙を笑顔で受け入れそうだし。
相手のキモチ
相手のタチバ
相手の……
「瀬名さん」
「………!」
グルグル迷走していた俺に、やっと佐伯が反応した。
あー助かった。
再び佐伯の方へ体を向けると
目を潤ませて、佐伯が小さく口を開いた。
「ひとつだけ、お願いが……」
「あぁ、何でもどうぞ」
「……っ か、帰り……
一緒に帰っていただけませんか……?」
「………」
……は?
「なんだって?」
「きょ、今日、仕事が終わったら瀬名さんと一緒に帰りたいんです」
「………」
「お、お願い……します」