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翻弄の果てに
第17章 激怒 絶望 そして再び…《祥子編》
祥子と力--------------




静かな食卓は、それぞれの思いや苦悩が入り混じり、箸が食器に当たる音すら聞こえることはなかった。

食後も会話は無く、未来も部屋に閉じこもってしまう。
悠太は寝室に篭る。
片付けを終えた祥子はダイニングテーブルにコーヒーを置き、座り込んだまま、湯気が上がらなくなるまで動くことを忘れたように身動きひとつしなかった。


今、この家に真夏の暑さを感じる者は誰ひとり居ない。
時が止まった家庭の風景だった。



祥子は環の最期の日、一緒に旅先に居た。
悠太と環の、常識やモラルを逸脱した深い愛を知らされた旅だった。

すっきりと晴れやかな環の表情を、祥子は、胸に秘め、話すことをタブーとしてきた真実を明らかにした晴れやかさだと思っていた。

しかし

その朝、環はひとり旅立っていった。

全てを、その重すぎる二人の全てを祥子に託して環は逝ってしまった。


思えば、環は悠太を託せる女性を求め続けた一生だったのだろう。
それが祥子だと環は確信し、全てを話した。そしてあの晴れやかな表情となったのだ。


もう、間違ってはいけない。どんなことがあっても、いかなる理由であっても、もう命を失わせてはいけない。


祥子は身体を硬くし、一点を強く見つめた。

環の笑い顔の写真だった。




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