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甘やかな縄
第1章 知ってしまった
 そして、思わず、


「あの、明日は倉敷の方で会えませんか?私、行きますから。」

 六郎は少しとまどったが、


「うんいいよ。夢さえ、よければね。じゃあ、時間十一時でいいかな?」


「十一時ですね。わかりました。あの、場所なんですけど倉敷は詳しくないので、、」


「ああ、大丈夫だよ。駅前のデパートの四階だったかな?モロゾフの喫茶店があるからね。そこの中でまってます。俺が遅れたら待ってて下さい。その前に連絡するけどね。」


 モロゾフと口の中で、美由紀は繰り返しながら、


「モロゾフの喫茶店ですね。わかりました。なにかあったら連絡しますね。楽しみにしています。」


「それと、明日はミニスカートできなさい。あまり短くなくてもいいからね。上は任せる。」

「はい、ミニですか。恥ずかしいですけど履いていきます。」


 お互いに、お休みを言い合い電話を切った。


 美由紀は下着とパジャマを着て、もう一度浴室へ行きシャワーを浴びさっぱりして自分の部屋で眠りについた。


 六郎は電話を切ると少し商品の写真を、自分のサイトにアップして、布団に潜りこんだ。


 翌朝、美由紀が台所で朝食を用意していると、夫の和樹がいつ帰ってきたのか、珍しく声をかけてきた。


「おはよう、昨日はすまなかったね。出張の支度出来てるかな?明後日の昼には帰って来られるから。」


 すまなそうな顔をして、出張の荷物を催促してきたが、


「お帰りなさい、あなた。いつ帰ったの、香織が淋しがってたわよ。着替えと荷物は、あなたの部屋に置いてあります。机の上に。それと、日曜日の動物園の約束、香織が楽しみにしてるから、お願いしますね。」


「日曜日ね。必ず連れて行くって香織にね。いや、僕が言うよ。」


 食卓に朝食を並べ終わる頃には、娘の香織が父親を見つけ抱き着いていた。
 親子三人の久しぶりの朝食の食卓を囲んだ。
 やがて、夫の和樹は出張へ出かけ、美由紀は香織を保育園へ送って行った。


「香織ちゃん、お迎えはおばあちゃんに頼んであるからね。おばあちゃんに甘えてきなさいね。」


 香織はくりくりした目で、


「はあい、おばあちゃんちで甘えてきます。ママも、お酒一杯飲んできなさいね。」


 思わず涙をこらえて、ウンウンとうなずいていた。
 保育園から家には帰らず車を岡山駅に走らせた。
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