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甘やかな縄
第2章 蛹化(ようか)
 美由紀のぼんやりした記憶が、ハッキリとしはじめるまで時間はかからなかった。


(裸?寝てた?うそっ!ロクさん、あっ、恥ずかしい!)


 なにがあったか思い出すと同時に、美由紀の肌を羞恥に染めた。
 六郎は美由紀が起き上がるのを待ちながら、


(うーん、綺麗やな。とりあえずは、夕ごはんやな。どこにするかな?椰子にするか、あそこなら大丈夫やな。)


 夕食の店を考えながら、六郎は道具の片づけを始めた。


「あの、ロクさん。寝てたみたいで。恥ずかしいです。」


 美由紀が起き上がりながら言うと、六郎が彼女の横に座り肩に手を回し抱き寄せた。


「目がさめたんや、夢。気持ち良さそうな夢の顔、可愛かったよ。」


「そ、そんな、私、、んっ、、んふっ、、」


 後の言葉は、男の唇に塞がれた。
 舌と舌が触れ合い、ざらっとした感触と唇の柔らかい感触が美由紀に、淫らな記憶を蘇らせた。


「夢、お腹が空いてないかな?夕ごはんを食べにいかないかなって思ったんやけど?」


 唇が離れると同時に発せられた質問に美由紀は、戸惑いながら、


「えっ、夕食ですか?そうですね、お腹も空きましたし。良いですね。」


「じゃあ、支度をして行こうか、夢。」


「えぇ、支度しましょうか、あの、私に作らせて貰えませんか?」


 美由紀は浮かんだ気持ちを素直に言ってみたが、


「えっ、手料理を?嬉しい!構わないんですか?」


 六郎は飛び上がりたいほどの喜びを、辛うじて抑え込んだ。


(嘘やろ、話がうますぎるわ。けど、嘘でも、嬉しい。まてよ、ほんなら俺の自宅か!)


 六郎の喜びが美由紀を浮き立たせた。


「えぇ、ロクさんさえ構わなければ?子供以外は、食べてくれる人もいませんから、、。」


(ばか!これじゃ、物欲しそうじゃない!でも、食べて欲しい、変かも?)


 自分の言葉に戸惑いながらも美由紀は、なぜか心が弾んでいた。


「えっ、でも旦那が、あっ、ごめんね、いらんことやね。それなら、少し買い物をして俺の家にいきましょうか?」


「あっ、はい、ロクさんの家で一緒に。」


(ばかっ!嬉しがってどうするの?でも、私、ロクさんのこと、好きかも?だめよ、香織がいるでしょ。いえ、今夜だけは、この人のモノ。)


 美由紀の中に六郎を好ましく思う感情が芽生え始めていた。
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