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甘やかな縄
第1章 知ってしまった
 真壁美由紀は、至って平凡な主婦だった。
 あの日までは。
 その夜は蒸し暑く寝苦しかった。
 美由紀は夫の帰りが遅い時、いつも携帯サイトで、小説を読んで過ごしていた。
 彼女の読む小説はアダルトな内容が多かった。
 そんなアダルト小説の一つに彼女を引き付ける物があった。
 その小説は普通のアダルト小説とは違いアブノーマルな世界を描いていた。
 なぜ引き付けられたのか、美由紀は自分でもわからなかった。
 ただ、その小説のヒロインが自分に重なって見えたのだった。
 そして、その小説を読んだあと美由紀は自らを慰めはじめていた。
 なぜとは、言えなかった。
 こんなことははじめてだった。
 そのうち、小説を読みながら自らの指先が、


「んん、なん、で、でも、、いぃ、、」


 くちゅっ、くちゅちゅ、淫らな音が美由紀の耳を打った。
 何度かそんな夜を迎え、美由紀は新たな欲求が芽生えているのを感じはじめた。
 しかし、その欲求を無視するだけの良識を持ち合わせていた。
 この男(作者)に辱められたいという、欲求を。
 小説を読み終わっても何度か読み返し、ますますのめり込み、彼女は自分自身の中の欲求が強くなり昼間の誰もいない時間には自らを慰めながら、禁断の妄想の中に沈んでいた。
 そんな時、作者の間六郎のブログに冗談風にパートナー、つまり奴隷を探していると。


(こ、これよ。でも、ハンドルネームなら誰かばれないわよ。)


 心の中で、ストッパーが外れる音が聞こえた。
 美由紀の指先が震えていた。
 携帯の画面を何度も見ながら、指先をキーの上から何度も外し躊躇った。


(なにやってるの。私には子供がいるのよ。でも、知りたい。)


 彼女は辛うじて踏み止まった。
 その時は。
 そして、しばらくは近づかないようにと、そのサイトから離れた。
 四五日ほどして、珍しく夫の和樹が早く帰宅し、娘と三人で夕食囲んだ。
 早目に娘の香織を寝させ、夫婦二人だけの夜を、いつものように体を重ねあった。
 美由紀はいつもの様に、イク振りをした。
 夫の和樹は、セックスが下手な方ではなく、むしろ彼女の周りでは和樹はセックスが上手いと知られていた。
 だから、美由紀は深刻になやんでいた。
 不感症じゃないのかと。
 セックスのあと美由紀は風呂に入ることが習慣になっていた。
 自らの火を沈めるため。
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