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short story
第18章 男の勲章/ haruto
「笑い事じゃねーよ!」


怒る俺にみなみはこう言った。



「遥斗って本当に・・・でも私、遥斗で良かった」



まだ見ぬいちかの彼氏への嫉妬がみなみへの愛しさに溶けていく。
・・・みなみで良かったのは俺の方だ。
みなみじゃなかったらこんなに幸せじゃないだろう。



「それは俺だよ・・・あの時みなみと出会えて本当に良かった」


「綺麗な年上のオネエサンじゃなくても?」


年上好きだったなんてみなみに言ったことあっただろうか・・・
何となく姉貴が入知恵する様子が浮かんで みなみの頭に鼻を埋める。


「そう」


「何でも許してくれるような心の広い美人じゃないよ?」


「・・・どこまで聞いてんだよ、ワガママで可愛いみなみが良かったの。俺の運命はみなみだったんだよ」


随分迷走して来たけど、みなみが俺を待っててくれた。
出逢うべき二人が出逢って、みなみの愛で俺の悪い魔法は解けたんだ・・・


みなみじゃなければ浮気の一つくらいしてたかもしれない。
こんなに一人の子を好きだと思うことはなかったかもしれない。
誰もが通るような家族としての経験に涙するほど、平凡を幸せとは思えなかったかもしれない。


・・・ふいにむーちゃんが浮かんだ。


えっちゃんを一途に愛するむーちゃん・・・
夫として父として、家族を愛するむーちゃんは実は凄くカッコイイんじゃないだろうか。



「む・・・お義父さんのこと師匠って呼んでもいいかな」


「今度はどうしたの!?」


みなみが顔を上げて俺を見る。
当たり前だ、可愛いだ運命だ言ってた次の言葉がこれなんだから。


「いや・・・実はお義父さんって凄いんだなって・・・」


奥さんを愛し子どもたちを育て上げ、それでいながら自分は家族の一歩後ろでいつもニコニコ皆を見ている・・・
むーちゃんの器のデカさに胸が熱い。


「変なの・・・でも喜ぶよ、“じゃあ遥斗くんも会話一つにダジャレは一回ね”って言われるかもだけど」


「それはキツイな」


俺とみなみは目を合わせてクスクス笑う。


ダジャレがウケた時に微妙に喜ぶむーちゃんが目に浮かんだ。
そんなむーちゃんの胸には家族愛という形のない勲章が光っていて、悔しいくらいカッコイイと思った。


むーちゃんと今度、一緒に酒でも飲んでみようと思っていた。






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