この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
short story
第19章 夏の欠片



「あらー、夏乃ちゃんよく来てくれて。」



玄関を開けると叔母が目を細め私を見た。



「すっかり綺麗になって、みんな驚くよ!」


「ハハハ」



懐かしい匂いの日本家屋に上がり、叔母について廊下を進む。
そのまま廊下の左側、客間である和室に入ると既に賑やかだったその部屋からは更に歓声に近い声が上がった。



「夏乃来たよ」


「夏乃ちゃんかい!?綺麗になったねぇ」


「カノ?カノは誰だっけね?」


「ばぁちゃん、夏乃は久美子の子!」


「……ああ、久美子の」



祖母が顔をくしゃくしゃにして頷くと、おばさんたちがどっと笑う。



「優介は明日来るって」


「そうかい、優ちゃんも悪いねぇ」


「お母さんは?」


「今、お父さんと買い物に行ってもらってるよ」


「そっか」


「夏乃ちゃんもお爺ちゃんに会ってあげて」



叔母の言葉に私は頷き、開いた襖続きの隣の部屋に目を向けた。
よそよそしい祭壇には、少し懐かしい祖父の写真が飾られている。



「爺ちゃんは夏乃のこと可愛がってたから喜んでるよ」



縁側から夏の日差しが差し込む明るい仏間。
叔母が見せてくれた祖父はただ眠っているようにしか見えなくて、実感もないまま私は線香をあげた。




入院していた祖父が亡くなったと母から知らせを受けたのは、昨日の早朝だった。
私の元に「虫の知らせ」なんてものは全くなく、ただその電話に呆然とした。



最後に会ったのはいつだっけ…
眠る祖父を見ながら考えた。
仕事が忙しく、ここ数年はあまり帰れずにいた。
帰ってきても友達との約束が優先で…
あんなに可愛がってもらいながら近年、私が祖父に会うことは殆どなかったのだ。



「いい顔してるでしょ」


「…寝てるみたい」


「起きそうでしょ?」



叔母が笑った。
その寝顔にその笑顔に、誰が現実と受けとめられるだろう。



その日、祖父の元には近所の人や友人、仕事をしていた頃の会社の人などがひっきりなしに尋ねてきてとても賑やかだった。






.
/325ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ