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short story
第19章 夏の欠片

そして叔母たちや母は忙しそうに動き、よく笑いよく喋る。
まるで祖父が亡くなったなんて嘘みたいにに晴れやかで…みんなとにかく明るくて。
私もまた久し振りに会ういとこやその子供たちと賑やかに過ごした。
うちの母は5人姉妹の末っ子で、上の三人とは少し年が離れている。
そのせいか上のいとこたちは母のことを「くみ姉」と呼び、その子供たちは私や弟のことを「夏乃姉」「優兄」と呼ぶ。
両親が共働きだった私たち姉弟は、祖父の家で過ごすことが多かった。
それは私たちに限らず他のいとこたちも同じで、夏になると遠くのいとこたちもやってきて同じ思い出を共有した。
子供好きな祖父は孫やひ孫を連れて色々なことをさせてくれた。
山に入りきのこや山菜を採ったりカブトムシを捕まえたり、畑仕事も手伝った。
夜はそうめんや畑で採れた野菜を食べ、花火をして縁側で西瓜を食べる。
子供同士でぎゅうぎゅうとお風呂に入り、そして家中の窓を開け放って扇風機をかけて眠る。
せせらぐ川の音と蛙の合唱、わずかな寝苦しさを感じながら眠りにつき、朝は鳥の声で目が覚める。
大きくなるまで繰り返された恒例の夏は、今でも輝かしい私の宝物になっていた。
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