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short story
第20章 Summer vacation / daichi
夏が好きだ。
空の色も強い日差しも湿度の高いあの空気も。


でも夏が好きな人間はそう多くはないようで。
今、隣にいるコイツ。
幼なじみの真優も・・・


「暑い・・・」


溶けかけたアイスクリームみたいにダレている。


「夏は暑いに決まってんだろ」


「つーかさ、タイちゃん熱中症になっちゃうんじゃないの?」


「うちの兄弟は防水防熱、頑丈に出来てんだよ」


それは満更嘘じゃない。現に末の弟、太陽はこの暑さの中でもヘルメットを被って自転車をガーガー乗り回している。


今日はお袋に用事があるため末の弟の子守を授かった。
そんな時、必ず俺は真優を呼ぶ。
俺一人でも見れない事はないけどその方が断然楽だからだ。


言うなれば真優は俺の手下。
従順じゃないのが残念だけど、こんな時にはなかなか使える奴なのだ。


「タイちゃーん、暑いからスポドリ飲むよー」


水筒を掲げて真優が太陽を呼ぶと、公園を旋回していたチャリンコ暴走族は一目散にホームに戻って来る。


「ほら、やっぱり汗すごい」


ヘルメットを取ると湯気が出んばかりに真っ赤な太陽。
真優は汗を拭いてスポドリを飲ませて団扇で扇いで・・・まるで母親みたいな甲斐甲斐しさだ。


真優が居るとやっぱり楽だと思いながら太陽に合わせて屈む真優を何の気なしに見ていた。
本当に何の気なしに見ていただけなのに、その時俺は気づいてしまった。
Tシャツの首元がたるみ、その奥に覗く柔らかそうな膨らみに。


「!」


慌てて目をそらしてそんなはずはないと考える。
真優に谷間なんて存在しない・・・はず。
そう思ってそっと視線を戻すとそこにはやっぱり胸の谷間があった。
しかも腕の動きに合わせて揺れている。


なかなかいい感じの肉付きだった。


「ねぇタイちゃん、暑いから帰ってプールしない?」


「水鉄砲していい?」


「うん、いいよね?大地」


ふいに真優が俺を見上げた。
ドキッとしたのは真優なんかを下心で見てしまった焦りだろうか。


「えっ?・・・あー・・・いんじゃね?」


視線を反らして平静を装う。


「いいって、やったね!」


そんな俺に気付かず真優は太陽とハイタッチして喜んでいた。
そんな二人を見ながら俺はまだドキドキしていた。











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