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short story
第7章 青春グラフティ /minami
「きーちゃーん・・・」


隣のクラスのきーちゃんは私の親友です。


「どうしたの?」


「音楽の教科書貸してください!」


パチンと手を合わせるときーちゃんがやれやれと溜息をつく。


「また?今週三回目」


「ごめん・・・」


「貸すのはいいけどみなみは忘れ物が多過ぎだよ。ちゃんと時間割りしてる?」


「してる・・・忘れないように置き勉もしてる」


「それはダメ!」


私ときーちゃんは幼稚園からの幼なじみで、こんな私は小さい頃からしっかり者だったきーちゃんとよくペアにされていた。
多分きーちゃんなら面倒見てくれると先生は思ったんだと思う。


きーちゃんと私は自他共に認める凸凹コンビだけど何故か昔から気が合った。
部活も違う、クラスも違う、それでも私達は中学生になっても尚、一番の友達だった。


「みなみ、部活終わったら待っててよ。一緒に帰ろう」


「うん!」




――――最近、私たちの会話は尽きない。
くだらない事から大事な事まで・・・
幾らだってきーちゃんとなら話せた。


私の家はお兄ちゃんが厳しいからケータイはまだ持たせてもらえない。
だからメールこそしなかったけど、これだけ会って話してるのに電話もしてた。





「今日のミュージックアワーST☆RISHが出るよ」


「ウッソ!録画しないと!」




「数学の星野がさ・・・」


「あの先生怖いよね!」



「マミと山口付き合ってるんだって」


「嘘ーーーっ!!」




「ねぇねぇ、梅昆布っていう芸人知ってる?」


「知らないよ・・・また変なのにハマったんでしょ」





とにかく何でも話した。
体育着の女子と体育着の上に制服を着た女子は見るからに重いバッグを背負いゆっくりゆっくり歩いて帰る。





「ねぇ、みなみは将来何になりたい?」


「んー・・・みなみは・・・雑貨作りたい。そして自分のお店を開きたい」


「みなみ好きだもんね」


「うん、きーちゃんは?」


「私は・・・保育とか看護とか介護とか・・・人と触れ合う仕事がしたい」


「きーちゃん血見るの苦手じゃん?看護師は無理だよ」


「確かに!手術の立ち会いなんてしたら倒れるかも」


「迷惑な看護師さんで有名になっちゃうね」



そして二人で大笑いして「遠い」未来を二人で見つめた。



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