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short story
第9章 天の川 /yuriko
「名乗るより先に名を呼ばれるとは・・・」
「ごめんなさい・・・」
声を聞いただけで胸が一杯だった。
それなのに山下さんは更に信じられない事を口走る。
「あなたの事が忘れられなくて・・・耐えられずに電話をしてしまいました」
「 えっ・・・」
「ご迷惑でしたか?」
「ぜ、全然・・・だって私だって・・・」
私だって山下さんを忘れる事が出来なかった。
それは言葉に出来なかったけど、その瞬間電話の向こうの山下さんが緩むのが分かった。
「由里子さん・・・部屋のカーテンを開けて貰えますか」
カーテンを・・・
言われた通り開けてみると向かいのタバコ屋さんの公衆電話に知ってる姿を見つけてしまった。
「やっとあなたの姿が見れた・・・」
「・・・・・・・・・」
涙が零れた。
「山下さん・・・そちらに行ってもいいですか?」
頷いた山下さんを確認して急いで下に降りた。
雨は止み、アスファルトには所々水溜りができている。
息を切らせ山下さんに向かい合った。
山下さんは私が知ってるどの顔より穏やかな表情で私を見てくれる。
「早かったですね」
「慌てて降りてきました。早く山下さんに会いたくて・・・」
「由里子さん・・・」
神様・・・克己くんの願いを叶えてくれてありがとうございます。
それから私の願いも・・・
「山下さん、今日は七夕なんですよ」
「七夕・・・そうか」
山下さんが空を見上げる。
「でもこの天気じゃ天の川は見えませんね」
「そうですね・・・でも織姫と彦星はきっと逢えたと思います。だって私の願いは叶ったし・・・」
二人が逢えたら七夕の願いは叶うと言う。
だからそれが何よりの証拠なんだと思う。
それに愛し合う二人の気持ちが同じなら、どんな事をしても彦星は織姫に逢いに行くに違いない。
山下さんが私の所に来てくれたように・・・
――――それがお父さんとの始まりだった。
その日から私たちは付き合い始めて、翌年お父さんが転勤になったのを切っ掛けに結婚して・・・
その翌年あゆ美が生まれて・・・
五年後には遥斗が生まれた。
「ごめんなさい・・・」
声を聞いただけで胸が一杯だった。
それなのに山下さんは更に信じられない事を口走る。
「あなたの事が忘れられなくて・・・耐えられずに電話をしてしまいました」
「 えっ・・・」
「ご迷惑でしたか?」
「ぜ、全然・・・だって私だって・・・」
私だって山下さんを忘れる事が出来なかった。
それは言葉に出来なかったけど、その瞬間電話の向こうの山下さんが緩むのが分かった。
「由里子さん・・・部屋のカーテンを開けて貰えますか」
カーテンを・・・
言われた通り開けてみると向かいのタバコ屋さんの公衆電話に知ってる姿を見つけてしまった。
「やっとあなたの姿が見れた・・・」
「・・・・・・・・・」
涙が零れた。
「山下さん・・・そちらに行ってもいいですか?」
頷いた山下さんを確認して急いで下に降りた。
雨は止み、アスファルトには所々水溜りができている。
息を切らせ山下さんに向かい合った。
山下さんは私が知ってるどの顔より穏やかな表情で私を見てくれる。
「早かったですね」
「慌てて降りてきました。早く山下さんに会いたくて・・・」
「由里子さん・・・」
神様・・・克己くんの願いを叶えてくれてありがとうございます。
それから私の願いも・・・
「山下さん、今日は七夕なんですよ」
「七夕・・・そうか」
山下さんが空を見上げる。
「でもこの天気じゃ天の川は見えませんね」
「そうですね・・・でも織姫と彦星はきっと逢えたと思います。だって私の願いは叶ったし・・・」
二人が逢えたら七夕の願いは叶うと言う。
だからそれが何よりの証拠なんだと思う。
それに愛し合う二人の気持ちが同じなら、どんな事をしても彦星は織姫に逢いに行くに違いない。
山下さんが私の所に来てくれたように・・・
――――それがお父さんとの始まりだった。
その日から私たちは付き合い始めて、翌年お父さんが転勤になったのを切っ掛けに結婚して・・・
その翌年あゆ美が生まれて・・・
五年後には遥斗が生まれた。