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蜜恋~お義父さんとは呼べなくて~④牡丹の花の咲く頃には
第14章 真実
トスは何をするでもなく、ただ茫漠と突っ立っているだけだ。
キョンシルはハッと胸をつかれた。トスの両脇に垂らした拳が震えている。低い嗚咽が闇のしじまを這うようにひそやかに響いた。背中もかすかに揺れている。泣いているのだ。
トスの泣いているところを、キョンシルは見たことがなかった。母ミヨンの弔いのときですら、トスは気丈に歯を食いしばって耐えていたのだ。強い男が泣くその理由は、余人には思い及びもしない事情が隠されているのかもしれなかった。
キョンシルはハッと胸をつかれた。トスの両脇に垂らした拳が震えている。低い嗚咽が闇のしじまを這うようにひそやかに響いた。背中もかすかに揺れている。泣いているのだ。
トスの泣いているところを、キョンシルは見たことがなかった。母ミヨンの弔いのときですら、トスは気丈に歯を食いしばって耐えていたのだ。強い男が泣くその理由は、余人には思い及びもしない事情が隠されているのかもしれなかった。