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万華鏡
第2章 視姦
結局本を返却することは出来ずに。
私は重い荷物を抱えたまま家に帰って来た。




―――多分気がついている。




その行為をしながらも時折私に投げ掛ける視線は、たしかに意思を持っていて。



――なんで。

――どうして。

――あんな‥。




頭は混乱してぐるぐるしている。
躯はその刺激に対して透明な汁を垂れ流していた。




蒼斗先輩の残像と、顔の無い女の矯声が思い出される。
何度も、なんども繰り返し。
壊れたビデオテープがエンドレスで再生を繰り返す様に。



蒼斗先輩長い指。綺麗な顔。サラサラした黒髪。
そして冷たいはしばみ色の瞳。



それらはまるで呪いの様に私のこころに取り付いて離れない。



先輩の美しい姿と相反して相手の女は私の中では既にただの雌になっていて。



何度もなんどもよがり、涎を垂れ流しては、卑猥な花を先輩の顔に押し付けている。



そして、それを想像する度に、私の躯の奥がざわざわとざわめき不協和音を奏でるのだ。




******




その次の日から一週間、私は図書室通いを止めた。


蒼斗先輩に会うのが怖かったから。


まだ半分‥夢の様に思えるあの時間。
次の日、目覚めたら実は夢じゃないかしら、と思えるぐらい現実味が無いあの時間。





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