この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ピンクの扉
第20章 豆田先生
誰かしら?と通話してみると、
ーー桃子さんですよね?ーー
若い男の声…名乗らなくてもすぐにわかりました。
豆田先生です。
「どうして私の連絡先を?」
ーーいやだなあ、PTAの名簿に書いてありましたよーー
そうだったわ。緊急連絡網を作成したいからと
書記の方からお願いされて教えたんだったわ。
「で、何のご用かしら?」
私は冷たく言い放ちました。
ーー昼間の事は謝ります。すいませんでした。
そしてこれは冗談抜きで遠足まで日程がタイトなので
ほんとならちゃんと打ち合わせをしたいのですが
二人っきりになったら、僕はまたムラムラしちゃうので
申し訳ないんですけど遠足の行き先を勝手に決めさせてもらいました。ーー
それはちょっぴり申し訳ないことをしたわ…
でも、行き先とか決めてもらえてラッキー♪
「それで、どこへ行くんですか?」
ーーはい、○○寺へ行こうと思います。
観光バスのチャーターもすませました。ーー
○○寺?PTAの遠足って
そんなつまらないところへ行くものなのかしら?
そのように伝えると、
ーーいえ、いつもはビール工場とかワイナリーなんですけど
たまには趣向を変えてと思いましてね。
それに○○寺は今年30年ぶりのご本尊ご開帳なんです。
どうです、ワクワクするでしょう?ーー
「ええ…そうですね…
先生はそういったものに興味がおありなんですか?」
あまりにも嬉しそうに話す豆田先生に聞いてみました。
ーーいやだなあ。
僕はこう見えても歴史を教える教師ですよ
寺院に興味がないといったら嘘になりますーー
はあ…そうでしたか…
当日、お天気が良いといいですわねと
言葉を濁して電話を切りました。