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ピンクの扉
第7章 第二部 序章
「ご主人がこちらにいるのなら
僕の出る幕はありませんね」
「どういう意味ですか?」
「あ、すいません。別に他意はないんですが…
実は僕、カメラが趣味でして、
気ままに風景を撮影するひとり旅なんですよ
で、もしあなたが一人旅なら
こうして隣同士で座ったのも何かの縁ですし
よければ一緒に観光地巡りでも…
なんて思ったものですから…」
「まあ、それは残念でした うふふ」
このように旅先での出会いも
また楽しいものだと桃子は感じた。
その後も他愛ない会話を楽しんだ。
おかげで千歳から札幌までの距離が
とても短く思えた。
札幌駅からタクシーに乗り換えて
主人の単身赴任社宅の住所を告げると
「すぐ近くですよ~、
歩いても行けますけど構いませんか?」と
反対に恐縮されてしまった。
都会では1メーターほどの短距離だと
不機嫌になってしまうドライバーもいるのだが
地方の温かさを感じてしまいました。
後部座席に体を預けて
さきほどの高速バスで
隣に座った男からもらった名刺を
ぼんやりと眺めた。
『長塚清四郎』
まあ、やだ…
すごい古風なお名前だこと…
それに持っていたカメラ…
すごく高価そうだったわ。
きっと耳に心地いいシャッター音がするんだろうなあ…
風景写真が趣味とか言ってたけど、
ヌード写真も撮影するのかしら
一緒に観光地をまわって人目を忍んでヌードでも撮ってもらったら楽しかったろうなあ…
そんな妄想を打ち消すように
「到着しましたよ」と
ドライバーが現実に戻してくれました。