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want to be ...
第8章 葛藤
大学中退して、就職も諦めて子育てに専念する。
苦労する?
…当たり前だよ。
大変だろうな…シングルマザーなんて。
しかもあたし、子供の育て方なんてほとんど分からない。
ほとんど?
ううん…皆無に近い。
早くに親を亡くしたから、両親にどんな風に育てられたかなんて全く覚えてないし、おばあちゃんやお兄ちゃんに頼るのは違う気がするし…
蒼汰さんに気付かれないようにひっそり生んで、ひっそり育てよう。
…いつか出会う機会があったとしたら、親戚の子供を預かってる、ってことにでもして。
中絶って選択肢は一切なかった。
だって、大好きな蒼汰さんとの子供だもん。
もし、妊娠してなかったら。
…して、なかったら。
いつも通りの日常に戻るのかな。
ただ、蒼汰さんを待ち続ける日常に。
自嘲気味に笑い、アパートの階段をのぼる。
着いたら確認しなきゃね…妊娠検査薬で。
階につき、無意識に部屋の方を見つめた…ら。
…え?
あたしの部屋の前に立ってる、あの人は…
思わずその人のところまで走り、顔を覗き込んだ。
「…うおっ!?びっくりした…。…杏奈?」
…落胆。
「なんだ…お兄ちゃんか」
あたしの部屋の前に立ってたのは、想像してた人じゃなく、お兄ちゃんだった。
それと…