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want to be ...
第9章 さよなら
「鈴宮」
この名前に、少し周りのお客さんがどよめいた。
鈴宮って…有名な化粧品メーカーの名前だ。
「待てっ…お前は、篠宮という名のただの凡人で…
たまたま来たあのパーティーで俺と会って、
優しくしてくれて、プロポーズも受け入れて…
結婚に至ったんじゃないのか?」
「…何度も言ったわよね?お金の為だって。
それに、あんな大きなパーティー…
たまたまで来れる訳がないでしょう。招待制なのに。
主催者はあたしのお父様よ。
だから本当のセレブだけをお招きしてたはずなのに…
とんだ低脳なじゃじゃ馬が紛れ込んでいたのね。
お父様にお願いして、
もう亀田の方は絶対に招かないことにして戴くわ」
「待っ…それだけは!世間体が…っ」
「はぁ…世間体。ここまで来ても自分を庇うのね…
もういいわ、そろそろ来てくださる頃だから」
女の人が嬉しそうに声を弾ませて言った…その時。
カランカラン
居酒屋の扉が開く軽快な音がして、女の人の嬉しそうな声が響いた。
「祥様っ!お待ちしておりましたの!」
「あぁ、俺の鞠子(まりこ)…迎えに来たよ」
「早く、あたし達の愛の巣に帰りましょ?
祥様に抱かれたくて鞠子、うずうずしてましたの」
「じゃあ今日は頑張ってみようかな」
「嬉しいですわ!早く帰りましょっ!
…あ、そこのお方。
もう二度と会うことはないでしょう…さようなら」
そう言って、再びカランカラン、と音がして、2人分の声が遠ざかって行った。
…なんか、本当に凄いな。
すると。
「っ待て鞠子っ」
ガタン!と音を立てて立ち上がり、店を出て行こうとした男の人。
「お待ちください、お客様」
「あぁん!?邪魔だ、どけ!俺は今からあの女に…」