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第10章 杏奈と蒼汰

｢秋人お願い、帰ってきて｣


わざわざ文面を満面の笑顔で読んでくれた。


｢これさっき優奈から来たの！
俺が恋しくて堪らないんだろうなぁ、
何だかんだ1週間はここにいるもんなぁ…。
身体が寂しくなったんだろうなぁ｣


｢じゃあさっさと帰って｣


｢冷たいな杏奈…。
お兄ちゃん帰ったら1人で寂しいだろ？｣


｢…｣


優奈ちゃんのことになるとものすごく機嫌がよくなり鬱陶しくなるお兄ちゃん。


いつもは適当に流すのにこの時は…蒼汰さんのこともあり、自分の中で感情のセーブが出来なかった。


そして…言ってしまった。


｢全っ然。あたし彼氏いるもん！｣


…あ。


言っ…ちゃった。


あたしの剣幕に驚いたお兄ちゃんが目を見開く。


｢…、へぇ…彼氏。あのずーっと片思いしてた
俺と同じ名前のイケメンくんだっけ？｣


｢違う！あんなやつもう別れたっ｣


…また言っちゃった。


｢えっ付き合ってたの！？じゃあ誰よ、杏奈の彼氏。
祐輔(ゆうすけ)くんか？拓真(たくま)くんか？｣


｢違うっ…蒼汰さん！
にっ…2個上で、物凄くかっこいいの。
お兄ちゃんより1000倍かっこいいの！
や、優しくて紳士的でっ、お兄ちゃんと違って
勝手に訪問してきて泊まったりしない人だもんっ｣


優しくて、から全部真逆だけどね…