この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
want to be ...
第29章 素直な気持ち 雫SIDE
ちょっ…杏奈。
矢野さん、ほんとに痛そうなんですけど…
ていうか、…て、いうか。
…あ。
「…」
あぁ…
やっぱりこの人、いい人だ。
杏奈を大切にしてくれる、凄くいい人。
だって、ほら。
杏奈に叩かれて、痛そうにした後恨めしそうに杏奈の事睨んでたけど。
その表情がすぐにふっと柔らかくなって、杏奈を優しく見つめてる。
杏奈はそんな矢野さんに全く気付いてないけど…
…で、たぶん本人も、自分がそんな表情浮かべてるって気付いてなさそう。
だって、素でこんな表情出来ないでしょ。
こんな心を許しきった、愛しいって感情が爆発してる表情…
これはもう、誰が見ても…赤の他人が見ても、彼氏が彼女にご執心なラブラブバカップルにしか見えないし…
…よかった。
よかったね、杏奈。
「もー、杏奈ったら。いつのまに「蒼汰さん」から
「蒼汰」に変わったの〜?
その呼び方初めて聞いたんだけどー?」
「えっ…!?あっ…あ、えと、花火大会の日に!ねっ」
嬉しそうに頷く矢野さん。
…あぁ。
「どうせ矢野になるもんな?」
「…っ、うん…」
凄い。
杏奈、ほんと頑張ったんだね…
2人を見てると、鼻の奥がツンとして涙が出てきそうになって。
あたしはそれを懸命に堪えていた。