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アンバランスなsweet
第22章 波の音と恋の終わり

「紫乃さん~!海!海が見えてきましたよ~」
里奈ちゃんの弾む様な声が車内に響いて、海が近いことを知る。
「あっ、うん!」
里奈ちゃんの声に、私のもやもやしたその思考は遮切られて。車の中に意識を戻す。
あのボーリングの後…。真くんも片桐さんも黙ったままで余り話そうとしなくて。少しだけ空気が重苦しい感じがして。
気を使って明るく振る舞う里奈ちゃんの声だけが妙に浮いてしまっていた。
キチンと瞳に映していなかったその車窓からの景色に意識を合わせ、外の景色を眺めてみる。
山間に囲まれた街に暮らす私達にとって、たまに訪れる海は何だか少し特別な存在。
例えて言うなら……そう雪解けに見つけた蕗の薹みたいな感じだろうか。
―――やっと会えたね
そんな気持ち。
いつもなら、海が見えてくる手前の最後の登り坂までくれば、海が見えてくる気配に自ずと心が弾むものだったけれど…今日はそんな気持ちを忘れていて。
「窓を少し開けましょう!」

