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アンバランスなsweet
第22章 波の音と恋の終わり

「里奈ちゃん、車の暖気が逃げてしまうよ?」

「いいんです!この淀んだ空気には換気が必要ですっ!」

「…淀んだ空気ってなんだよ」

「真さん…怖いなぁ。…そのままですよ?」

「潮の香り…するかなぁ?」


里奈ちゃんのその一言で沈黙していた車内の空気が少しだけ晴れる。

その坂道をゆっくり海へ向けて下って。
T字路を海岸線を走る道に向かって曲がってから、真くんが少しだけ車の窓を開けてくれた。


「里奈ちゃん…、潮の香りしないね」

「そうですね…。でも風に乗って紫乃さんのいつもの香りがします!」

「柚子のやつ?」

「ええ」


まだ寒いその春先の風が吹き込んで来たけれど、さわ潮の香りはしなかった。

その代わり里奈ちゃんの鼻には、いつもの香り…、私が仕事でもプライベートでもつけていた柚子の練り香水の香りが、届いたみたいだった。

香水は余り得意では無い私は、その練り香水だけは身に纏う事が出来て。仕事中でも邪魔にならないそれを愛用していた。


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