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アンバランスなsweet
第23章 対峙する心

そういって、片桐さんは写真から私の方に視線を移した。
片桐さんの黒目がちその目には私の姿が映っている。
でも、それは網膜に映っているだけで意味をなしてはいない。
片桐さんは私を視てはいなかった。
視線の先に亜子さんを――探していたから。
「アイツは死んでしまって、もうこの世には居ない。
火葬に立ち合い、骨になったアイツの姿を俺は見たよ。
白い骨。片手で持てるぐらいの小さな骨壺。
亜子から亜子の抜け殻になってしまったもの。
何度もそれを思い出して。
亜子の魂はここにはもういないと、そう自分に言い聞かせた。
仕事に打ち込むことで、躯を酷使することで、亜子のことを忘れようと努力したさ。
最初の頃は上手くはいかなかったが、日々の暮らしが、時間が少しずつ、俺を癒してくれた。
だけど、反面そうやって亜子のことを忘れる自分が。忘れないでと願っていたアイツを裏切っているみたいに思えたんだ。」

