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第1章 コンプレックス

　小さい診療所なので、診療所内の清掃は職員で行っていた。

　診察室と処置室、処置室側の廊下は看護師たち。
　事務室と待合室、トイレの掃除は事務職員たちが担当していて、昨日は私がトイレ掃除の担当の日で…。


「すいませ‥‥」

「週末の合コン、卸の小林さんが幹事だから、県南地域の診療所の事務の女の子達が来るみたいですよ。先日の保母さん達との合コンも当たりだったし、期待大ですよね」
「県南地域の診療所って、具体的にはどこの診療所？それとも総合病院かな？」
「先に言ったら、顔割れしてるからつまんないだろーっって小林さん、言うっすよね。全然かまわないから教えてくれって頼み込んでも教えてくれなんですよ」
「なんだよ、それ。確かに県南の受付の女の子達は、割と可愛い子多いし、期待は高まるけどさ。でも、俺いくら可愛くても、ここの事務員のあの子みたいにデカい女はパスだわ・・・。食種が動かねー」
「ですよねー」

トイレのペーパータオルを補充しようと男子トイレに入ろうとした時に聞こえてきた声に、おもわず足が止まってしまった。デカい女とは言わずもがな私のことだろう。

　もちろん彼らは営業職。
　待合室や私達職員が聞こえる前ではそんな軽口を口にすることは無いけれど、男子トイレに女子職員が来るなんて想定はしていなかったんだと思う。
　そしてそのＭＲさん達はいつも爽やかな挨拶をしてくれる事務職員に割と人気の二人だった。