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BLACK WOLF
第7章 獣のような目で
ドアはすんなりと開き、私はそのまま雨の中を逃げ出した。




時刻は、日付が変わる少し前。

何も持たず、靴も履かず、着替える暇もなく薄着のまま飛び出したのだ。

荷物なんて用意する時間もないし、邪魔になるだけ。

黒埼が用意してくれた靴は全てヒールで踵が高い。

そんな靴で走れるわけない。


真っ暗な道を所々にある外灯が照らしているだけ。

冷たい雨に刺すような冷たい風。

誰も通らないような山道を必死に走りながら逃げた。






どこへ行けばいいかなんてわからない。

逃げたとしても頼る人もいない。

アパートも引き払われてしまったし帰る家もない。






私はどこへ向かおうとしてるのか。

ただ言えるのは、あの家にいたくない、それだけだった。






山道の降り口のような場所に辿り着いた。

うっすらだが街の灯りが見え出した。

通りすぎる車に助けを求めようにも、こんな土砂降りの真夜中に通る車なんてほとんどない。

その前に雨の中にこんな裸足で薄着でびしょ濡れの女がいたら、怖がって誰も停まってなんてくれない。

とにかく、もっと人通りの多いところに逃げよう。

早くどこかに…。

そろそろ黒埼が私がいないことに気づいて探し出してるかも知れない。

早くしないと黒埼に見つかってしまう。

どんな手段を使ってでも私を探し出すに違いない。

もっと遠くに…。







それでも、正直体力は限界だった。

どれくらい冷たい雨の中を走っただろう。

ぬかるみにはまりながら砂利道を通ったせいか、足から血が滲んで痛くて…。






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