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BLACK WOLF
第8章 醒めない悪夢
布団の中の私の格好は…

恐らくハルちゃんのトレーナーとジャージであろうものを着せられている。

足や手にも包帯が巻かれてる感じがした。

多分、いや…きっとそうだと思うんだけど…見られちゃったのかな、いろいろ…。


薄いワンピース1枚だけで、靴も履かずにここまで走って来たんだっけ。

ハルちゃんの顔を見た瞬間、安心して力尽きて倒れたんだ。

「ハ、ハルちゃ…っ」

私は逃げた。

逃げられたんだ…っ。

嬉しくて嬉しくて、ずっと堪えてた涙が溢れた。


「お前、どうしたんだよ?何があったんだ…?携帯に掛けても出ねぇし、アパートまで様子見に行ったら解約した後だったし。どこで何してたんだよ…?こんな、ボロボロな格好で…っ」



涙を流す私の頭を優しく撫で上げながらそう尋ねてきたが

言えない…、言えるわけない…。

それでも、撫で上げられた手の感触がとてもリアル。

夢じゃない。

私はあの家から逃げられたんだ。

黒埼の手から逃げられたんだ…っ。




不思議。

ほんの1週間前に会ったところなのに、ハルちゃんの声がとても懐かしい。

心地いい。

この部屋も、この空間もとても懐かしい。



「そう言えば…、舞が俺の部屋に来たのはこれで3回目だな」

「え…?」


涙を流す私を見て、何かを察してくれたのか急に話題が変わった。

それは、まるでどうでもいいような他愛ない世間話。



「確か、1回目は舞が東京に出てきた時。俺の部屋が見たいとか言ってムリヤリ押し掛けて来たんだよ」

「あ…そうだっけ…?」

「2回目は舞がホームシックになった時。バイトに行けなくなるくらい寂しがってたよなー。ここで朝になるまで酒飲んでバカ話しただろ~?」

「そんな事もあったっけ…?」

「あったよ!次の日さ、お前はスッキリしてたけど俺は二日酔いのまま出勤したんだからな!」





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