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BLACK WOLF
第9章 罪と罰




幼馴染みの腕に甘えて、嫌な記憶を消そうとしてる。



自分の気持ちもわからない。

でも、この優しい腕でくしゃくしゃにされてしまえば忌まわしい記憶も、香りも、痕跡も━━━━━━





「━━━…っ!あー、もう…っ!そんなんじゃさすがに萎えちまうよ」




ふっと体が軽くなった。




え…?と、思いゆっくり目を開けると…

ハルちゃんは私の体から離れていて、溜め息を付きながら頭を掻いている。

「どう、して…?」

「んな脅えられたら無理だって…」

「そ、そんな…っ、脅えてなんか…」



嘘。

本当は脅えてた。

ハルちゃんと私は幼馴染みじゃなくなってしまいそうで…。

それに、ハルちゃんを利用して体に染み付いた嫌な香りと記憶を消そうとしてた。

脅えながらも、そんな狡い事を考えてた。



「強がんなよ。ガタガタ震えてるし涙目だし」

「あ、あの…こ、これは…っ」

「…焦って悪かった」

申し訳なさそうに私に謝るハルちゃんを見てさすがに胸が締め付けられた。

ハルちゃんの気持ちに応えられないくせに、ハルちゃんの腕で壊してもらおうとした。

自分の気持ちもハッキリしてないのに。

「…とりあえず、風呂入るわ。本当、マジでごめん」


そう言ってハルちゃんは、私の方を振り向く事なく、足早にその場から立ち去ってしまった。





ハルちゃんの気持ちに応えられてないのに、ハルちゃんを受け入れそうになった。

受け入れる、というより、ハルちゃんの香りで黒埼さんの香りを掻き消そうとした。

無かったことにしたかった。

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