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BLACK WOLF
第11章 満月の夜の狼


この邸にいると時間の感覚がなくなる。

お腹の虫は鳴くし、寒気も感じる。

窓から見える真っ暗な空を見上げて、肌に感じる冷気を感じて、夜が来たのだと実感する。

食欲は湧かないが、体のべとつきは気になる。

ベッドから降りて私はお風呂場へと向かった。




部屋を出ると、薄暗い廊下が続く。

いつも思うがこの邸にはハッキリとした照明はない。

せいぜい間接照明のような頼りない灯りだけ。

まるでドラキュラ屋敷だ。

薄暗い階段を手すりだけを頼りに降りて、お風呂場へと向かう。




薄暗くしーんっと静まり返る邸内。

酒井さんは帰ったし、黒埼さんはこの邸のどこかの部屋で仕事中。

今、この邸内には私と黒埼さんしかいないんだ。





壊れた人形がムリヤリ動くように、覚束無い足取りで歩いた。







相変わらず薔薇の香りが充満してる。

私の体に染み付いたハルちゃんの香りすら簡単に消されてしまいそうなほど。

私はまたこの香りに支配される…。







キィッと脱衣場のドアを開けると…


「ん…?」

「━━━━━━っ!きゃあっ!!」


悲鳴を上げた私は慌ててドアを閉めてしまった。





そこにいたのは、黒埼さんだ。





ちょうどお風呂上がりなのか、濡れた髪をタオルで拭きながら、腰にタオルを巻いた姿で目の前に立っていたのだ。

思わず脱衣場に入ることなくドアを力いっぱい閉めた。







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