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BLACK WOLF
第12章 その鋭い牙で仕留める如く
「あっ、う…」

嬉しさのあまり涙が浮かんだ。

一時は死さえ覚悟したのに、こんな奇跡が起こるなんて夢にも思わなかった。

私は一生、この牢獄から抜け出せないと思っていた。




「今晩は最低なご主人様とディナーでもするか?」

「え…?あ…」




今晩、黒埼さんとディナー?

あ、そっか。

最後の最後だからお別れのディナーの事かな…?

本当なら今すぐここを出てハルちゃんの元へ帰りたいけど、今ここで下手な事をしたら強引にL.Aに連れて行かれるかも知れない。

最後まで大人しく言うことを聞いた方がいいかも知れない。



「…わかりました」

「じゃ、早速酒井さんにフルコースを頼んでおく」



そう言って私の部屋のドアを閉め1階へと降りて行ってしまった。




1人、静かな部屋に残った私は




今までにないくらいの喜びを感じていた。








帰れる。

元の世界へ、いつもの在り来たりな毎日へ帰れる。

ハルちゃんの元へ戻れる!




胸のドキドキが止まない、嬉しい。




でも、何事もなかったかのようにハルちゃんの元へは帰れない。

ハルちゃんの気持ちには答えられてないし、そんな事考える余裕もなかったし、2度と会えないと思ってたし。

それに、ハルちゃんの前から2度も勝手にいなくなっちゃったんだもん、どんな顔して会えばいいのか…。

それでも、私の心はここから解放されるということだけで嬉しかった。

心が踊って、まるで生きる希望の光が見えたみたいだった。

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