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BLACK WOLF
第12章 その鋭い牙で仕留める如く
長く、薄暗い階段を降りてダイニングキッチンへと向かう。
キィッ…
「よっ」
小さな愛想のない返事。
どうやら黒埼さんは先に席についてたみたいだ。
席につき、新聞を読んでたみたいだが私がドアを開ける音でこちらに気づいたみたいだ。
「お待たせしてすいません」
「いや、俺もさっき仕事が終わって今来たところだから」
いつもより照明が落ちていて部屋は薄暗いがテーブルの上にセットされた真っ赤なキャンドル数本が部屋を明るく灯している。
それでも、こんな頼りない炎じゃ部屋全体は照らせないけど。
黒埼さんの真向かいの席についた。
「どうした?今日は雰囲気が違うな」
「…最後のディナー、ですから…」
こんな薄暗い部屋の中でも黒埼さんの眼光は鋭い。
クローゼットの中にあった衣類の中で1番上品そうな…、真っ白で胸元にユリのコサージュをあしらったワンピースを着用。
ここへ来てから1度も使ったことのないメイク用品で少しだけメイクを施したのだ。
ディナーに相応しい格好をしようと思った。
「あ、あんな高そうな化粧品、使ったこともないし…」
「似合ってる。腹立たしいぐらいだ」
ドキッ
ち、違う…。
今のは黒埼さんの台詞にドキッとしたんじゃない。
この人がこんなふうに口説くときは絶体裏があるから構えちゃっただけで
そんな深い意味のドキッなんかじゃない。