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BLACK WOLF
第12章 その鋭い牙で仕留める如く
いつもと同じ、真っ黒なスーツに真っ黒な髪。

確かにこの人にはワインがよく似合う。

血の色に似た滴り落ちるような真っ赤なワイン。



「料理も食え。冷めちまう」

「はい…。でも…」

「舞?」



本当はお腹は空いてる。

ハルちゃんが見たらまた痩せたと心配されるぐらいここのところロクに口にしていない。

だから、嬉しい知らせがあった今日ぐらいは食べられると思ってた。

なのに…


「しゃ、しゃんぱんが…おいしくてぇ…」

「お前、まさかもう酔ったんじゃ…?」

「違います。何だか眠い…」

「顔赤いし目も潤んでる。酔ってんじゃねぇか…」


酔ったんじゃなくて、何だか眠いだけ。

ハルちゃんと朝まで飲み明かした時だって、缶酎ハイやビールを飲んで全然酔わなかったし。

なのに、何だか眠い。

瞼が重く感じる。

せっかくのご馳走にすらまだ手をつけてないのに、強烈な睡魔が襲ってくる。





ずっと気を張ってて、毎日のように体力限界まで弄ばれて、その度に悔しくて泣いて

それももうすぐ終わりなのかと思うと嬉しくて、緊張の糸が解けたのかも知れない。








「ん…」

「ちょ…おい…っ」














本当は、今日のこのワンピースもメイクも

本当は黒埼さんに気づいて欲しかったのかも知れない。

大嫌いなこの狼に。

薔薇の香りを纏ったこの獣に。










「まぁいい。手間が省けた」
























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