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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物

真っ暗な部屋に窓からの月明かり。

静かな夜に、この部屋に響くのは時計の秒針の音。

まるで催眠術にかかったみたいにベッドに寝転んだまま動けずにいる。

そして、頭の中にはハルちゃんの顔と、耳にはハルちゃんの声。




「あは…、もう涙すら出ないよ…」




ハルちゃんと逃げることも出来た。

昔のメロドラマみたいに遠い地へ駆け落ちすることも出来た。

でも、出来なかった。

だってそんな事しても無駄だから。

きっとあの男は追いかけて来る。

どこまででも、何をしてでも。





「またそーやって死人みてぇな面してんのか?」

「……あ」

時計の秒針に催眠術をかけられたみたいに思考回路が働かない。

ベッドに寝転びながら窓からの見える月を眺めていたが、そこに聞こえてきたのは黒埼さんの声だ。

寝転びながら振り返ると、そこにはドアにもたれた黒埼さんがいた。

「……いつの間に?」

「さっきからずっといた。お前は気づいてなかったみたいだけど」





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