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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物
いつもみたいに壁にもたれながら、気だるそうに私に話しかけてくる。

もう慣れた、こんな光景。

「あの…」

「幼馴染みの坊やなら心配ない。ちゃんと自宅まで届けたしそれから何もしてない」

ハルちゃんは、無事なんだ。

よかった。

でも、私が聞きたいのはそんな事じゃない。

ハルちゃんの事は心配だったけど、もっと大事なこと。


「L.Aにはいつ行くんですか?」

「何だ、いきなり改まって」


私にはもう帰る場所がない。

母親もハルちゃんをも無くした私の帰る場所は、どんなに否定してもこの人のそばしかないのだから。

もう今更、異国に行くのが嫌だとかそんなことはどうでもいい。

好きに連れて行けばいいんだ。




死んだような心。

屍になった私でいいなら好きにすればいい。

今まで通り、好きに抱けばいい。





「はぁ。その事なんだけどな」

「…何か問題でも?」

溜め息を吐いた黒埼さんは私から目を反らした。

目を反らしたまま、私の方を見ようともしない。

…何?

どうしたの?

何か問題でも出てきたの?



黒埼さんは黙ったまま何も言わない。



「黒埼さ━━━━━」

「舞ちゃんっ!あ~、舞ちゃん、無事でよかったわ~っ!」



━━━━━━え?



突然、黒埼さんの脇からすり抜けるように現れ、慌てながら室内に入り、ベッドの上の私を抱き締めた女性。

この声の主。

すぐにわかった。


今にも泣きそうな声で私を抱き締め、よかったよかったと私の頭を撫でるこの人物。


「お、叔母さん…?春子叔母さん…!?」

「よかった…。本当によかった…。舞ちゃんに何かあったらあの世で姉さんに怒られてしまうよ…」


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