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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物
「さっさと行けよ」
え…?
さっさと行けって…?
今、さっさと行けって言った…?
な、どうして…?
だって、私をL.Aに連れて行くんじゃ…?
「ほら、黒埼さんに迷惑がかかるでしょ?」
「え?あ、く、黒埼さ…?」
「お前、もういらねぇ」
私の方を見ず、背中を向けたまま私に言ったその一言に胸がズキッと痛んだ。
いらないって、何それ…?
散々私を弄んで、ぐちゃぐちゃにして、何もかも…、ハルちゃんをも奪っておいて今更いらないって、何それ…?
でも、そんなことはどうでもよくて、どうして今更、何でいらないって…。
叔母さんに手を引かれ玄関まで連れて行かれてしまった私は、着の身着のまま、ここへ来たときと同じような状態だった。
「本当に、長々とお世話になりました」
「いえ。こちらこそ、退屈しませんでした」
春子叔母さんは玄関ででも深々と頭を下げながら最後までお礼の言葉を口にしていた。
その横で呆然とする私。
そんな私達を眺めながら黒埼さんはどこか寂しそうに笑っている。
…退屈しなかったって、嫌味?
「落ち着く場所がわかったら教えて下さい。舞さんの荷物を送りますから」
この人、本当に…?
本当に私をL.Aに連れて行かずこのまま帰す気なの?
どうして…?
どうせまた何か企んでるに違いないんだ。
この間みたいに喜ばせるだけ喜ばせて後でまた地獄に叩き落とす気なんだ。
そうに決まってる。
じゃなきゃ、こんな簡単に私を逃がすわけがない。