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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物
「な、何…、どうしたの?」

「その…、黒埼さんの事…」



え…?黒埼さん?

そー言えば、叔母さんと黒埼さんは知り合いみたいだったけど、どうして叔母さんと黒埼さんが?

叔母さんのその声は、重々しく、何か重大な秘密を打ち明けるようだった。

叔母さんも私の顔を見ることなく、少し俯いたような表情だ。


「…黒埼さんが何?」

「姉さんには口止めされてたんだけどね」


あ…、そっか、借金の事だ。

私の死んだ父が黒埼さんに借金をしてて、お母さんが返済してたって話だ。

叔母さんは、私がその事実を知らないと思ってるんだ。

…本当は全部知ってる。

初めて黒埼さんに会った日に全て聞かされた。

まぁ、それで私が借金のカタとして監禁されてたなんて夢にも思わないだろうけど。


「……春子叔母さん、大丈夫。気にしないで。私全部知ってるから」

「えっ?」


そうだよね。

両親を亡くした私に今、そんな話したくないよね。

叔母さんの口調を聞いてわかった。

お母さんや叔母さんは私の為に必死に隠そうとしてくれてたんだ。


「そりゃ最初聞いた時はびっくりしたよ。顔も知らないお父さんの借金の話なんて」

「…ごめんね。舞ちゃんのお父さん、昔は教師だったんだけど、ご実家が小さな工場を営んでらしてね。舞ちゃんのお祖父ちゃんが亡くなってすぐ教師をやめて工場を継ぐことになったんだけどこの不況で会社は倒産。残ったのは莫大な借金。それを黒埼さんが肩代わりしてくれたんだよ」


…お父さんが教師?

そんな話、初めて聞いた。

だって物心ついた時にはお父さんは既に亡くなっていたから。


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