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BLACK WOLF
第14章 夢をみていた獲物
「初めて聞いた。お父さんの話」
「姉さんは"舞が寂しがるから"って理由であんまり話さなかったらしいから。でもね、舞ちゃんが東京の大学に合格した時も"頭の良さはあの人の血を引いてるのかね"って、姉さんも喜んでたから」
春子叔母さんは父の話を懐かしそうに話てくれたが…。
ダメだ、どんなに聞いても全く現実味が湧かない。
そりゃそうだ。
顔も見たことのない父親の話をされても全くピンッと来ない。
学校の先生だった事や工場を経営してたなんて事、まるでどこかの他人の話を聞かされてるみたいだった。
「もっと早く話すべきだったね…。ごめんね…」
「大丈夫。もう、大丈夫…」
全部、黒埼さんから聞かされていたことだ。
工場を建て直すなら確かに大金が必要だし、その全てを黒埼さんが請け負ったとしたら相当な額だ。
確かに、私やお母さんが働いて返せる額じゃなかったのかも知れない。
…でも、何だか、黒埼さんの口から聞かされる事実と身内から聞かされるのとじゃ少し気分が違う。
黒埼さんの口から出た言葉は全く真実味がなかったのに、身内や親族から聞かされると「そうなんだ」と妙に納得してしまえる。
窓から流れる景色を見ながら顔も思い出せないお父さんの事を考えた。
これといった思い出もなく、残ったのは莫大な借金だけだけど、不思議と怨みも怒りも感じなかった。
「けど、お母さんも災難だったよね。わざわざあんな人にお金を借りるなんて…」
「舞ちゃん…、黒埼さんに失礼じゃないの」
黒埼さんが雇ったタクシー運転手さんに気を使ってるんだろうけど、こっちはあの男の本性を毎日のように見せつけられてたんだ。
叔母さんはルームミラー越しに軽く頭を下げて運転手さんに謝っていた。
「だって、そうじゃない。あんな悪魔みたいな人にさ…。まるでドラマに出てくる悪徳な取り立て屋じゃない…」
「姉さんは"舞が寂しがるから"って理由であんまり話さなかったらしいから。でもね、舞ちゃんが東京の大学に合格した時も"頭の良さはあの人の血を引いてるのかね"って、姉さんも喜んでたから」
春子叔母さんは父の話を懐かしそうに話てくれたが…。
ダメだ、どんなに聞いても全く現実味が湧かない。
そりゃそうだ。
顔も見たことのない父親の話をされても全くピンッと来ない。
学校の先生だった事や工場を経営してたなんて事、まるでどこかの他人の話を聞かされてるみたいだった。
「もっと早く話すべきだったね…。ごめんね…」
「大丈夫。もう、大丈夫…」
全部、黒埼さんから聞かされていたことだ。
工場を建て直すなら確かに大金が必要だし、その全てを黒埼さんが請け負ったとしたら相当な額だ。
確かに、私やお母さんが働いて返せる額じゃなかったのかも知れない。
…でも、何だか、黒埼さんの口から聞かされる事実と身内から聞かされるのとじゃ少し気分が違う。
黒埼さんの口から出た言葉は全く真実味がなかったのに、身内や親族から聞かされると「そうなんだ」と妙に納得してしまえる。
窓から流れる景色を見ながら顔も思い出せないお父さんの事を考えた。
これといった思い出もなく、残ったのは莫大な借金だけだけど、不思議と怨みも怒りも感じなかった。
「けど、お母さんも災難だったよね。わざわざあんな人にお金を借りるなんて…」
「舞ちゃん…、黒埼さんに失礼じゃないの」
黒埼さんが雇ったタクシー運転手さんに気を使ってるんだろうけど、こっちはあの男の本性を毎日のように見せつけられてたんだ。
叔母さんはルームミラー越しに軽く頭を下げて運転手さんに謝っていた。
「だって、そうじゃない。あんな悪魔みたいな人にさ…。まるでドラマに出てくる悪徳な取り立て屋じゃない…」